QOL(生活の質)を向上さるほう法の一つとして、介護の手伝いをしてもらうというものもある。家事などを介護士に任せっぱなしにしていることに対して負い目を感じている高齢者も少なくなく、テーブルふきやたたみ物などを手伝ってもらうだけで高齢者の負い目を軽減することができる。特に女性の利用者の場合、以前まで行っていた家事に触れてもらうことで以前までの気持ちを思い出してもらい、QOLの向上を期待することができるのである。また、料理を任せるという考え方もあるものの、利用者への危険性を考慮すると配膳などの手伝いにとどめておく方法もある。いずれにせよ、高齢者に家事を手伝ってもらうことで自立心を取り戻してもらえる可能性が高まるのである。
また、一部日常動作を自分だけで行ってもらい、ADL(日常生活動作)を高めることでQOLを向上させる考え方も無視できない方法だ。ADLの向上がQOLの向上につながっているという考え方からすれば、体を動かすようになることで気持ちが前向きになり、積極的に自己実現に取り組むようになるケースも考えられる。また、いきなりADLの向上を促すのではなく、最初はサポートしつつ徐々に以前の状態に戻ってもらえるよう介護する方法もある。特に排泄に関しては、介護してもらうことで自尊心が傷ついていることも多く、一人でこなせるようになるだけでも気持ちを取り戻しやすい。このように、ADLを高めることを意識することによって、より高齢者にとって居心地の良い介護施設にできるのである。